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リサイクル預託金

新車や中古車を購入したときに、「リサイクル預託金」の支払が発生します。
これは、平成17年から導入された自動車リサイクル料金預託制度に基づくもので、主として廃車時の費用に充当されることになっています。
この「リサイクル預託金」については会計処理が煩雑ですので、誤った処理をしているケースも多いかと思います。
今回は、車両の「購入」「売却」「廃車」の段階ごとに、会計処理を整理してみたいと思います。

1.購入時の処理
リサイクル料金は以下の項目により構成されています。
①シュレッダーダスト料金
②エアバッグ類料金
③フロン類料金
④情報管理料金
⑤資金管理料金
このうち、⑤については購入時の費用となり、消費税区分は「課税仕入」となります。
その他の項目(①②③④)については、廃車時の費用となるため、購入時点では費用とすることはできません。
会計処理としては「前払費用」「預け金」「預託金」などの資産科目で処理し、消費税区分は「課税対象外」となります。

2.売却時の処理
車両を外部に売却したとき(新車購入時の下取りを含む)は、本体とともにリサイクル券もあわせて譲渡することになりますので、会計処理としては購入時に計上した資産科目を減少させることになります。
このリサイクル券の譲渡は金銭債権の譲渡になりますので、消費税区分は「非課税売上」となります。
なお、平成26年税制改正により、平成26年4月1日の譲渡からは、金銭債権の譲渡額の5%のみを課税売上割合の計算で分母の額に算入することとされています。

3.廃車時の処理
車両を廃車したときは、自動車の廃棄(リサイクル)というサービスを受けることになりますので、費用処理することになります。(消費税区分は「課税仕入」)
なお、消費税の税率については、サービスを受けた時の税率が適用されますので、平成26年4月1日以降に廃車した場合には8%で課税仕入の計算をすることになります。


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復興特別法人税の廃止

平成26年の税制改正で、当初3年の予定であった復興特別法人税が1年前倒しで廃止されることになりました。
つまり、平成26年4月1日以後に開始する事業年度からは復興特別法人税がかからないことになります。

ところで、法人が支払いを受ける利子・配当等に係る復興特別所得税の額は、復興特別法人税から控除されることになっています。
以前より、復興特別法人税が廃止されると、上記の復興特別所得税はどこから控除するのかという疑問があったのですが、今回の前倒し廃止に伴い、規定が整備されました。

平成26年4月1日以後に開始する事業年度より、法人が支払いを受ける利子・配当等に係る復興特別所得税の額は「所得税額」とみなして、法人税額から控除・還付を受けることができることになりました。

ただし、「平成26年4月1日以後に開始する事業年度」と書きましたが、一部例外があります。
決算期変更や会社の新規設立などで1年に満たない事業年度がある場合には、復興特別法人税が課税されている間の復興特別所得税については、復興特別法人税額から控除する必要がありますのでご注意ください。


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生産性向上設備

平成26年度の税制改正で「生産性向上設備投資促進税制」が創設されています。
詳細を記載することはできませんので概要だけをお知らせします。

<対象設備>
A先端設備
B生産ラインやオペレーションの改善に資する設備
特に、Bについては、要件を満たせば車両運搬具以外のほぼすべての減価償却資産が対象となる可能性があります。
ただし中古資産は除外されます。

<対象事業者>
青色申告の法人及び個人事業者
「生産性・・・」となっていますが、製造業に限定されておらず、卸売業・小売業・サービス業なども適用可能です。

<優遇措置>
平成28年3月31日までは即時償却100%または税額控除5%(ただし、建物・構築物は3%)の選択制となっています。
平成28年4月1日から平成29年3月31日までは即時償却50%、税額控除4%(建物・構築物は2%)に縮減されます。

かなりインパクトのある制度ですので、設備投資を計画中の会社・個人事業者の方は、必ず税理士か公認会計士にご相談ください。
特に上記のBの設備については、購入前に経済産業局に申請して確認書をもらっておく必要がありますので、十分ご留意ください。

適用要件など詳細は以下の経済産業省のサイトでご確認ください。
http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/seisanseikojo.html


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LED取替費用

先日、LED蛍光灯への取替に関する質問を受けました。

U課長:「今後の費用削減のためLED蛍光灯に替えようと思うのですが。」
原:「投資額は電気代の節約額で回収できそうですか?」
U課長:「私の試算では十分採算がとれそうです。」
原:「LED蛍光灯はまだ下がる可能性はありますが、今後の費用削減が目的であればいいんじゃないですか?」
U課長:「修繕費処理は可能ですか?」
原:「可能です。」
U課長:「全営業所でやると金額が大きくなりますが、それでも大丈夫ですか?」
原:「国税庁が質疑応答事例で公表していますので、大丈夫です。」

固定資産について改良や修理を行った場合、「修繕費」と「資本的支出」の区分がよく問題になります。
修繕費となった場合は支出額の全額をその期間の費用として計上するのに対して、資本的支出となった場合は固定資産の取得として支出額の一部をその期間の費用(減価償却費)として計上することになるからです。
一般に両者は以下の考え方で区分されます。
修繕費:故障や不具合のある固定資産の原状回復費用、通常の維持管理費用
資本的支出:固定資産の価値を増加させる支出、使用可能期間を長くするための支出

上記の考え方からすれば、LEDへの取替費用は節電効果・耐久性の向上のための支出であり「資本的支出」のような気がしますが、国税庁によるとそのようには考えないようです。
「質疑応答事例」によると、LED蛍光灯は照明設備(建物付属設備)の部品の一つに過ぎず、その部品の性能・耐久性が高まったことをもって照明設備全体の価値が高まったことにはならないため、LED蛍光灯への取替費用は修繕費処理が相当とされています。
「質疑応答事例」では、どこまでを固定資産の部品と考えるのかが明確にされていませんが、消耗により取替・交換がなされるものについては部品と考えてよいと思います。

なお、LED蛍光灯への取替と同時に行われる安定器の取替費用についても、照明設備全体の価値が高まったとまではいえないことから、修繕費処理が容認されるようです。

↓国税庁「質疑応答事例」↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/12.htm

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決算賞与

社長「今期は利益が結構出そうだな。」
原「この調子だと税引前利益は500万円くらいになりそうです。」
社長「税金を払うくらいなら従業員に賞与を出そうかな?」
原「賞与を出せば確かに税金は減りますが、会社の資金はもっと減ります。」
社長「えっ?」
原「税金が減る以上に税引前利益が減るので、会社の資金は確実に減ります。」
社長「それじゃ賞与はやめたほうがいいの?」
原「いえ、従業員のモチベーションを向上させることが必要なら、社長がご判断ください。」
社長「うーん。」

中小企業では結構よくある会話ですが、具体的な数値で考えると明らかです。
決算賞与を100万円とし、実効税率を25%とします。

<決算賞与を支給しない場合>
税引前利益:500万円
法人税等:125万円(500万円×25%)
税引後利益:375万円(税引前利益-法人税等)

<決算賞与を支給する場合>
税引前利益:400万円(500万円-決算賞与100万円)
法人税等:100万円(400万円×25%)
税引後利益:300万円(税引前利益-法人税等)

この設例の場合、税引前利益が100万円減少したにもかかわらず、法人税の減少は25万円にとどまったため、税引後利益は75万円の減少となっています。
つまり、決算賞与を支給しない場合と比べて75万円の資金が会社から流出することになります。
節税したつもりが会社の資金を減らしたのでは本末転倒です。

しかし、私は決算賞与を支給すべきではないと言っているのではありません。
「節税のために決算賞与を支給する」という考え方が間違っていると言っているだけです。
考え方を変えれば、75万円の資金負担で従業員に100万円の賞与を支給することができるということです。
それにより、従業員のモチベーションが上がるのであれば、会社にとって大きなプラスになるかもしれません。
決算賞与の支給の可否は、経営上のプラスとマイナスを十分考慮して判断すべきものと思います。

ところで、決算賞与を支給する場合には、留意すべき事項があります。
期末日までに決算賞与を支給した場合には問題なく損金算入となりますが、期末日までに支給しなかった場合でも以下のすべての要件を満たせば損金算入が認められます。
・支給を受けるすべての従業員に対して、期末日までに各人別に支給額を通知している。
・期末日から1ケ月以内に、通知したすべての従業員に支給している。
・決算において、未払計上により損金経理をしている。
なお、期末日から支給日までの間に退職した従業員に通知額を支給しなかったり、就業規則で支給日に在籍する従業員だけに賞与を支給することと規定している場合は、損金算入が認められないことになっています。

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交際費課税(Ⅳ)

今回は、誤解の多い「社内交際費」を採り上げたいと思います。

社長:「社員2人と飲みに行ったので、この領収証を福利厚生費で処理しといてくれ!」
経理部長:「福利厚生費では処理できません。残念ながら交際費になります。」
社長:「従業員との飲食なのにどうして交際費なんだ?」
経理部長:「社長、今回のような支出は社内交際費になってしまうのです。」
社長:「社内交際費!?」

「社内交際費」という用語は、「社内の飲食はすべて福利厚生費になるという誤った思い込み」に対して警鐘を鳴らすために発生した俗語です。
言い替えますと、社内の飲食でも交際費になることがあるということです。

法人税法上、交際費となる飲食代は得意先や取引先との飲食に限られていません。
役員や社員も事業に関係する者であり、社内の飲食であっても基本的に交際費に該当することになります。
ただし、従業員の慰労を目的として、全員に参加する機会がある飲食、例えば忘年会や社内リクレーション行事費用等については、その支出は福利厚生費とすることができることになっています。
つまり、福利厚生費処理は例外的に認められているということなのです。

これらを考えますと、福利厚生費として処理できる社内飲食費は意外に少ないのではないでしょうか?

なお、社内の打ち合わせを喫茶店で行った場合、少額の飲食費が発生することがありますが、このような支出まで交際費に含める必要はなく、会議費として処理することが認められます。


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太陽光発電設備の即時償却

平成24年の税制改正で、環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)が拡充されています。
具体的には、一定の太陽光発電設備と風力発電設備について、1年以内に事業の用に供した場合、即時償却(初年度に全額償却)ができることになったのです。
最近、この制度の詳細が明らかとなりましたので、今回はその留意点についてお伝えしたいと思います。

<対象となる設備>
固定価格買取制度の認定を受けた以下の設備
・出力10kw以上の太陽光発電設備
・出力1万kw以上の風力発電設備

<取得時期>
平成24年5月29日から平成25年3月31日までの期間

<損金算入される事業年度>
発電設備を事業の用に供した事業年度


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がん保険の改正(Ⅱ)

以前のコラムでも書きましたが、終身保障のがん保険の法人税法上の取扱について、国税庁は「法令解釈通達」を4月27日付で公表しています。
↓国税庁のサイト↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010810/pdf/240418.pdf

法人契約のがん保険(終身保障タイプ)については、従来は、支払の都度または保険期間の経過に応じて、全額損金算入されることになっていました。
しかし、その保険を中途で解約した場合に多額の解約返戻金が発生することに対して、以前より国税当局は問題視していました。
「解約すれば返還される部分まで損金算入を認めてもよいものか」と。

実はこのような効果が得られる保険は以前にもあり、長期平準定期保険や逓増定期保険などがその代表的なものでした。
ただ、いずれも既に国税当局に対策を講じられており、最後まで残っていたのが「がん保険」でした。

今回の改正により、今後契約するがん保険は全額損金算入することはできず、契約から一定期間については、年間保険料の1/2を損金算入することとなりました。
ただし、契約の中途における解約返戻金のないものについては、従来通り、年間保険料について全額損金算入が認められるようです。

この改正は、平成24年4月27日以後の契約から適用されることになります。
つまり、過去の契約については遡及適用されず、平成24年4月26日以前の契約については、今後も全額損金算入が可能ということになります。


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分譲マンションの駐車場

都市部を中心に、分譲マンションの駐車場の空きが増加しているそうです。
私の住むマンションも駐車場には多くの空きがあるようです。

このような場合、マンションの管理組合は空き駐車場を外部へ貸すことを考えます。
しかし、それには税金の問題がありました。
具体的には、収益事業とされる部分について、マンション管理組合を「人格なき社団」とみなして、法人税が課されるのです。
(人格なき社団の説明については今回は省略します。)

それでは、どのような行為が「収益事業」とみなされるのでしょうか?
この点について、最近、国税庁は文書回答事例として公表しました。
照会者は国土交通省の住宅局長のようです。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/hojin/120117/index.htm

<外部貸付分だけでなく区分所有者貸付分も収益事業>
区分所有者か外部者かを問わず、申し込み順で駐車場を貸し出す場合
<外部貸付分のみが収益事業>
区分所有者を優先する条件が設定されている場合
<収益事業には非該当>
区分所有者への貸し出しに支障がない範囲で、一時的に駐車場を貸し出す場合

これを機に、都市部の分譲マンションでは、駐車場の外部への貸し出しが増加するのではないでしょうか?


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実質返戻率に問題がある理由

先週のコラムの記事について、お客様から質問を受けました。
「なぜ実質返戻率に意味がないの?」と。
お答えします。

用語の説明から始めます。
解約返戻率=保険の解約返戻金/保険料の累計
この返戻率には単純返戻率と実質返戻率という考え方があります。
まず、単純返戻率は上記算式の分母の保険料を実際に支払った保険料で計算します。
これに対し、実質返戻率は保険料の損金算入による法人税の節約額を控除して計算します。
例えば、
全額損金算入の保険料:100万円(年間)
5年後の解約返戻金:300万円
法人税率:40%
の場合、
単純返戻率=300万円/100万円×5年=60%
実質返戻率=300万円/(100万円-100万円×40%)×5年=100%
となります。

以上を踏まえて、設例で考えます。

<保険を利用しない場合>
・経常利益200が8年続く。
・5年目に500の役員退職金が発生する。
・法人税率40%
   所得 法人税
1年目 200  80
2年目 200  80
3年目 200  80
4年目 200  80
5年目△300   0(欠損金300発生)
6年目 200   0(欠損金200控除)
7年目 200  40(欠損金100控除)
8年目 200  80
合計 1100  440
8年間の資金収支1100-440=660

<全額損金算入の保険を利用する場合>
・経常利益200が8年続く。
・年間100の全額損金算入の保険に5年間加入
・5年後に解約返戻金300(実質返戻率100%)
・5年目に500の役員退職金が発生する。
・法人税率40%
   所得 法人税 
1年目 100  40
2年目 100  40
3年目 100  40
4年目 100  40
5年目△100   0(欠損金100発生)
6年目 200  40(欠損金100控除)
7年目 200  80
8年目 200  80
合計  900  360
8年間の資金収支900-360=540

資金収支では、保険を利用する場合と比較して保険を利用しない場合は120も有利となっています。
節税したつもりが会社の資金を減らす結果になるのであれば、完全に本末転倒です。
では、実質返戻率100%といいながら、なぜこのような差が発生するのでしょうか?
それは、実質返戻率という考え方には、保険料支払時の税効果は考慮されているが、解約時・解約後の税効果が考慮されていないという致命的な欠陥があるためです。
なお、保険を利用する場合が有利になるのは、単純返戻率が100%を超える場合に限られますが、そのような保険は殆どないのではないかと思います。

私は保険が駄目と言っているのではありません。
「保険で節税」という安易な考え方に問題があると思うのです。
経営上の様々なリスクに備えるため、保険は必要な「保障」の度合いに応じて加入すべきものではないでしょうか?


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