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事業再生ADR

先週、岡山県のバイオ関連企業H社が経営破綻しました。
事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)という制度を利用して、事業の再建を目指すようです。

事業再生ADRという手続は、民事再生法や会社更生法による法的手続ではなく、中立的な第三者機関によって自主的な再建を図る手続です。
この手続は取引先との関係などを維持する上では非常に有効な手続といわれています。
法的倒産手続の場合、金融機関に対する支払いだけでなく取引業者への支払いも停止されてしまいますので、事業継続に大きな障害が発生するからです。

つまり、事業再生ADRは任意再建と法的再建の中間のような制度なのです。
ただし、債権者と話し合いがまとまらない場合には、法的手続に移行せざるをえないこともあり、広い意味では「倒産」に含まれるものと思いますので、H社の信用の低下は否めません。

H社は地元では超優良企業として信奉されていた会社だけにとても残念です。
私の父もとても驚いていました。(弟の就職先に薦めていたくらいです。)
一部の報道では巨額の粉飾決算も報じられていますが、真偽は定かではありません。
監査法人による監査もされていたとは思いますが。。。


信和綜合会計事務所(大阪の税理士法人)
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FMラジオ局の破綻

神戸市のFMラジオ局「Kiss-FM KOBE」が倒産しました。
先週の4月28日に神戸地裁に民事再生法の適用を申請し、受理されたようです。

昔、兵庫県に住んでいる頃は、自動車に乗るときには常にKiss-FMを聴いていましたので、かなりショックです。

報道によると、架空売上や簿外債務など、かなりの額の粉飾決算をしていたようで、「全国FM放送協議会」という団体から除名処分を受けたようです。
FMラジオ局にとって、この団体からの除名処分というのは致命的といわれています。
なぜなら、予算的に自社で番組制作が満足にできないFMラジオ局は、「全国FM放送協議会」からの番組配信に頼っているという現状があるからです。
つまり、番組の自社制作割合の低いKiss-FMの場合、放送する番組がない時間帯が発生するかもしれないのです。

会社側は事業譲渡によるFMラジオ局の存続を目論んでいるそうですが、ラジオ局の存在意義が薄くなってきている現状では、なかなかスポンサーは見つからないのでは?と思います。
個人的には、再生を期待していますが。。。


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クライスラーは破産?

先月末、アメリカの自動車会社「クライスラー」が連邦破産法の申請をしました。
クライスラーはGMやフォードよりかなり規模が小さいものの、アメリカ自動車産業のビッグスリーの一角であり、予測されていたとは言っても「倒産」はショッキングなニュースでした。

報道では、「連邦破産法」という用語が使用されることが多いですが、クライスラーは破産して清算する予定ではありません。
イタリアの自動車会社「フィアット」やアメリカ・カナダ政府の支援により、再生を計画しているようです。

日本では、清算型の倒産手続は「破産法」・「会社法(特別清算)」に、再生型の倒産手続は「民事再生法」・「会社更生法」に規定されています。
これに対し、アメリカでは、「Bankruptcy Code」という一つの法律の中に、清算型の倒産手続や再生型の倒産手続などが規定されています。
例えば、Chapter7(第7章)には清算に関する規定があり、Chapter11(第11章)には再生に関する規定があります。

この「Bankruptcy Code」のことを「連邦破産法」と訳しているようなのですが、破産という清算型手続だけを規定した法律ではないため、「連邦倒産法」と訳したほうがよいと思います。
また、今回クライスラーは同法の「Chapter11」に基づく申請をしたのですが、「Chapter11」は一つの条文ではなく複数の条文で構成されていますので、「11条」と訳すのではなく「11章」と訳すほうが正しいでしょう。
少し語呂は悪くなりますが・・・

ところで、クライスラーは再建できるのでしょうか?
さらに、GMやフォードなどのアメリカの自動車産業は再生できるのでしょうか?

残念ながら、私には分かりません。

ただ、確実に言える事は、環境性能を含めた品質では、日本メーカーの車は外国メーカーの車に負けることはないということです。
アメリカ車などは日本車に比肩することすらできません。
為替が極端に円高に振れていた昨年秋から年初の頃とは異なり、最近は為替水準も安定しつつあります。
同等の価格水準であれば、日本製品は世界のお客様に選ばれるのです。
自動車産業に限らず、日本メーカー(日本人)はもっと自社製品に自信と誇りを持つべきではないでしょうか?


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「象のマークの・・・」

先週末の9月19日に大阪の松本引越センターが民事再生手続開始の申立を行いました。
同社はテレビCMなどでも有名でしたが、昨年には前社長の自殺や会長の解任など、社内でのトラブルが話題になっていました。
近年では、業界内の競争激化に加えて燃料費の高騰などにより、業績は悪化していたようです。

ところで、以前のコラムでも書きましたが、民事再生手続は再生型の法的倒産手続の一つです。
誤解を恐れずに、簡潔に「民事再生手続」を表現してみましょう。
「民事再生手続とは、それまでの借入金などの債務の大半を免除してもらう代わりに、その後の事業によって生じた利益を財源として、一定の債務を分割して弁済する手続です。」
もちろん、金融機関や仕入先などの債権者は民事再生手続により債権の大半をカットされることになりますので、債権者の過半数の合意が前提となります。

私は、民事再生申立側・監督委員側併せて10件近くの関与経験から、民事再生に向いている会社とそうでない会社があると考えています。
(視点1)仕入
売上原価に占める仕入の割合が低い会社ほど、民事再生に向いています。
申立後は、仕入先の協力が得られる場合でも、現金による仕入を余儀なくされることが多く、資金繰りが圧迫されるからです。
従って、一般的に卸売業よりサービス業の方が民事再生に向いています。
(視点2)顧客
最終消費者を顧客とする会社ほど、毎日現金収入が期待できるため、民事再生に向いています。
申立後は、外部からの新たな資金調達は困難であり、売上代金だけが会社の収入となるからです。
(視点3)倒産原因
大口の貸倒れによる資金繰りの悪化、投資判断の誤りによる設備過剰など、倒産原因を特定できる会社ほど、民事再生に向いています。
過大債務を免除し、利息負担をなくせば、本業による利益を計上することができるからです。
逆に、売上高が徐々に減少することにより業績が悪化している会社は民事再生に向いていません。 
利息負担をなくしても、本業による利益を計上する見込みがなければ、再生は不可能なのです。

それでは、松本引越センターの場合はどうでしょうか?
上記の「仕入」と「顧客」の視点からは、民事再生に向いていると考えられます。
しかし「倒産原因」については推測することしかできませんので、何とも言えません。
ただ、象のマークというキャッチコピーで社会の認知度は高いため、有力なスポンサーがつくことが予想されます。
個人的には、引越業の同業者より、全国展開している不動産賃貸業の大手がスポンサーとなる方が、同社の事業価値を高めることができるのではないかと思います。


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大阪地方裁判所

先週の金曜日(6月6日)に大阪地方裁判所に行ってきました。
と言っても、悪いことをしたからではありません。
公認会計士として、民事再生法申立会社の監督委員の補助をしているからです。
私は、この業務を時々引き受けていますが、少し特殊な仕事です。
新聞やテレビで、民事再生法というのはよく出てきますが、監督委員というのはあまり出てきません。

民事再生とは、法的な倒産手続の一つです。
法的倒産には、事業を停止して財産の処分・分配を行う「清算型」と、一部の債務を免除して事業の継続を目指す「再生型」とがあります。
清算型には、破産(破産法)や特別清算(会社法)などがあるのに対し、再生型には、会社更生(会社更生法)と民事再生(民事再生法)があります。
(再生型手続である会社更生と民事再生の違いは、また別の機会に譲ることにします。)
民事再生手続の場合、裁判所から監督委員が選任されます。
監督委員は、再生手続が適正に行われているかを裁判所に代わって監督する重要な役職であり、申立会社の法的機関として登記簿に登記されます。
例えば、監督委員が選任されると、監督委員の同意を得てからでなければ、申立会社は財産の処分など一定の行為を行うことができなくなります。

大阪地方裁判所の場合、監督委員には弁護士が選任されています。
今回は、弁護士の先生からの依頼で、監督委員の補助をしています。
具体的には、
①特定の債権者に有利な弁済・相殺をしていないか
②取締役の違法行為や会社に損害を与える行為はなかったか
③提出された再生計画案の実現可能性・合理性
などについて調査し、報告書を提出します。
(守秘義務の関係で、具体的な会社名や懸案事項などは書くことはできません。)
昨日の裁判所面談では、普段お話をすることのない裁判長から意見を求められたりして、なかなか刺激的な夕方でした。

しかし、ここ数ヶ月、倒産件数が大幅に増加しています。
個人的には、会社の業績を景気のせいにするのは好きではありませんが、景気の先行きがやはり心配です。


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