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「象のマークの・・・」

先週末の9月19日に大阪の松本引越センターが民事再生手続開始の申立を行いました。
同社はテレビCMなどでも有名でしたが、昨年には前社長の自殺や会長の解任など、社内でのトラブルが話題になっていました。
近年では、業界内の競争激化に加えて燃料費の高騰などにより、業績は悪化していたようです。

ところで、以前のコラムでも書きましたが、民事再生手続は再生型の法的倒産手続の一つです。
誤解を恐れずに、簡潔に「民事再生手続」を表現してみましょう。
「民事再生手続とは、それまでの借入金などの債務の大半を免除してもらう代わりに、その後の事業によって生じた利益を財源として、一定の債務を分割して弁済する手続です。」
もちろん、金融機関や仕入先などの債権者は民事再生手続により債権の大半をカットされることになりますので、債権者の過半数の合意が前提となります。

私は、民事再生申立側・監督委員側併せて10件近くの関与経験から、民事再生に向いている会社とそうでない会社があると考えています。
(視点1)仕入
売上原価に占める仕入の割合が低い会社ほど、民事再生に向いています。
申立後は、仕入先の協力が得られる場合でも、現金による仕入を余儀なくされることが多く、資金繰りが圧迫されるからです。
従って、一般的に卸売業よりサービス業の方が民事再生に向いています。
(視点2)顧客
最終消費者を顧客とする会社ほど、毎日現金収入が期待できるため、民事再生に向いています。
申立後は、外部からの新たな資金調達は困難であり、売上代金だけが会社の収入となるからです。
(視点3)倒産原因
大口の貸倒れによる資金繰りの悪化、投資判断の誤りによる設備過剰など、倒産原因を特定できる会社ほど、民事再生に向いています。
過大債務を免除し、利息負担をなくせば、本業による利益を計上することができるからです。
逆に、売上高が徐々に減少することにより業績が悪化している会社は民事再生に向いていません。 
利息負担をなくしても、本業による利益を計上する見込みがなければ、再生は不可能なのです。

それでは、松本引越センターの場合はどうでしょうか?
上記の「仕入」と「顧客」の視点からは、民事再生に向いていると考えられます。
しかし「倒産原因」については推測することしかできませんので、何とも言えません。
ただ、象のマークというキャッチコピーで社会の認知度は高いため、有力なスポンサーがつくことが予想されます。
個人的には、引越業の同業者より、全国展開している不動産賃貸業の大手がスポンサーとなる方が、同社の事業価値を高めることができるのではないかと思います。


信和綜合会計事務所(大阪の税理士法人)
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