記事一覧

設立事業年度の役員給与

平成18年度の税制改正において、役員給与の改定は事業年度開始日以後3ヶ月以内に行わなければならないこととなりました。
それでは、会社を設立した事業年度はどのように考えたらよいのでしょうか?
現在のところ、これに関して明確な取扱いは示されていません。
考え方としては、以下の二つがあると思います。
①設立から3ヶ月以内に役員給与の額を決定する。
設立事業年度においては、設立日が事業年度開始の日であることを根拠にした考え方です。
②役員給与が支給できるようになった時点で役員給与の額を決定する。
税法上の規定が「改定」の時期についての定めであることから、最初に役員給与を決定することについては適用がないとの解釈に基づく考え方です。
いずれが正しいのしょうか?
今のところ、結論は出ていません。
ただ、いずれの考え方にも問題点はあります。
①について
設立・開業から3ヶ月程度では、事業が軌道に乗っていないことも多く、役員給与を支給する財源となる資金がない場合がある。
②について
設立事業年度の損益を概括的に予測できる時まで、役員給与の支給開始を意図的に遅らせることにより、利益調整が可能になってしまう。
個人的には、役員給与に関する税制改正の趣旨から考えて①が妥当のような気がします。(あくまで私見です。)
また、事業が軌道に乗った時点で決算期の変更による事業年度の短縮を行い、新事業年度開始から3ヶ月以内に役員給与の決定を行うことも無難かと思います。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

ホームページ費用

信和綜合会計事務所のホームページをリニューアルしています。
今のところ、更新の途中なのですが、新しいメニューなどを盛り込んで3月中の正式オープンを目指しています。
でも、なかなか思い通りにならないものです。
さて今回は、ホームページの作成・更新を外部に委託した場合の費用の取扱いについて説明します。
会社情報や商品情報などを紹介するホームページに関しては、通常1年以内の期間に更新されることが多いため、支出した事業年度の損金に算入されると考えてよいと思います。
逆に、あまり現実的ではありませんが、更新を1年以上予定していない場合は、その使用期間に応じて、期間配分することになります。
しかし、ホームページの中には、サイト上で買い物ができる仕組やデータベースにアクセスできる機能を有するものもあり、その作成・更新費用にはプログラム(ソフトウエア)の作成費用が含まれていると考えられます。
このような場合、ホームページの作成・更新費用のうち、ソフトウエアの作成にかかる部分は、無形固定資産として原則5年で償却することになります。
なお、ソフトウエア部分を区分できない場合は、費用全額を無形固定資産とせざるを得ないと思います。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

続・役員給与

先月、国税庁より、以下の質疑応答事例が公表されました。
・役員給与
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/houzin/5394/02.pdf
・特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/houzin/5394/01.pdf
上記はいずれもQ&A方式で、国税庁に寄せられた質問に対する回答という形になっています。
実務上、この公表物は大いに参考になるといわれていますが、私はそのようには思いませんでした。
というのは、記載内容の大半が、「当然そう考えるべき」常識的な内容だと思われたからです。
ただ、一点だけ、個人的に参考になったことがあります。
特殊支配同族会社に該当するかどうかを株式基準(議決権基準)により判定するあたって、業務主宰役員等と同一内容の議決権を行使することに同意している者とはどんな人かという問題です。
ポイントは2点です
①同一内容の議決権を行使することに、契約・合意があること。
②出資、雇用関係、取引関係など緊密な関係があるという状況証拠だけでは該当しない。
したがって、従業員や顧問税理士などが株式を取得したからといって、上記の契約や合意がなければ、直ちに「同一内容の議決権を行使することに同意している者」に該当するわけではないということができます。
この点、過度に税務当局寄りの見解を示していた「某団体」、「某税務情報誌」などは猛省しなければならないと思います。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

平成19年税制改正の概要

平成18年12月19日に財務省から「平成19年度税制改正の大綱」が公表されました。
大きな改正点は以下の3項目です。
1.残存価額及び償却可能限度額の廃止
従来は、減価償却資産について、耐用年数経過時点において残存価額(10%)まで、最終的に償却可能限度額(5%)までしか償却することはできず、売却や除却をするまで5%の帳簿価額が残高として残っていました。
しかし今回の改正で、備忘価額(その資産があることを忘れないための価額)の1円まで償却できることとなりました。
同時に、定率法の償却方法も複雑になりました。
途中まで、定額法の償却率の2.5倍の償却率で計算するようです。
例えば耐用年数を10年、取得価額100万円の機械を、期首に取得したとしますと
①従来
償却率 0.206
減価償却額 1,000,000×0.206=206,000円 
②改正後
償却率 0.1×2.5=0.25
減価償却額 1,000,000×0.25=250,000円
となります。
ただ、耐用年数が2年の場合はどうするんでしょうか?
償却率 0.5×2.5=1.25 ???
わかり次第、報告いたします。
2.特定同族会社に対する留保金課税の一部除外
特定同族会社(説明省略)が配当などをせずに一定額以上を内部留保した場合に税額が加算されていますが、その対象から資本金または出資金1億円以下である会社が除外されました。
3.特殊支配同族会社の適用除外基準の引き上げ
現行は基準所得金額800万円以下の場合に適用除外とされていますが、改正後は基準所得金額1,600万円以下の場合が適用除外となります。
その結果、大幅に適用対象会社数が減少するものと思われます。
しかし、間違った法律である以上、私は廃止または全面停止すべきと思っています。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

特別償却VS特別控除(その2)

それでは、特別償却と特別控除はどちらが有利なのでしょうか?
30%特別償却、7%特別控除のケースの初年度を考えますと、
特別償却の場合、法人税等の実効税率を40%と考えますと、取得価額の12%(30%×40%)の節税効果があります。
これに対し、特別控除の場合、法人地方税の実効税率を20%と考えますと、8.4%(7%×120%)の節税効果となります。
この結果、初年度だけを比べますと、特別償却が有利ということになります。
しかし、特別償却は、本来2年目以降に償却すべき額を、初年度の償却額に上乗せしているだけの制度です。したがって、特別償却を適用してもしなくても、耐用年数経過後の償却累計額は同額となり、長期的な観点からは、節税効果があるとは言えません。
この点、特別控除は、長期的な観点からも、確実に法人税額を減額していますので、節税効果が認められます。
以上のことを踏まえますと、特別償却と特別控除は、状況に応じて使い分けることが良いと思います。
<ケース1>
年度により、利益水準が大幅に変動し、当年度は大幅に利益が生じる見込みの場合(来年度以降、継続的に一定の利益が生じる目処は立っていない場合)
「特別償却」を選択することが多いです。
<ケース2>
毎年一定水準以上の利益を確保しており、来年度以降も安定的な利益計上が見込める場合
「特別控除」を選択することが妥当です。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

特別償却VS特別控除(その1)

特別償却は上乗せ償却の制度ですので、法人所得を圧縮することにより、税率を乗じた節税効果がありました。
これに対し特別控除は、一定の計算により、税額そのものを減額する制度です。
租税特別措置法では、特別償却の認められている場合は、基本的に特別控除も認められており、いずれかを選択適用できることとなっています。(なお、割増償却は除きます。)
例えば、前々回お伝えした使用頻度の高い制度の場合ですと
①中小企業者等が機械等を取得した場合等
 ・取得価額の30%の特別償却
 ・取得価額の7%の特別控除
②事業基盤強化設備を取得した場合等
 ・取得価額の30%の特別償却
 ・取得価額の7%の特別控除
③情報基盤強化設備等を取得した場合等
 ・取得価額の50%の特別償却
 ・取得価額の10%の特別控除
というように、選択適用できるのです。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

インターネットに接続されたデジタル複合機

平成18年の税制改正で、特別償却に関する改正はいくつかありますが、主なものとしては以下の2点が挙げられます。
①「情報基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却」の創設
 (「情報通信機器等を取得した場合等の特別償却」の廃止)
②「中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却」の対象資産に「ソフトウエア」と「インターネットに接続されたデジタル複合機」の追加
①については、対象資産が大幅に変更となっています。
具体的には、ISO15408認証(セキュリティ対応)を受けたソフトウエア等に限定されています。(詳細は省略します。)
②のうち、ソフトウエアについては、除外されるもの(サーバー用OS、データベース管理ソフトなど)が列挙されていますので、対象資産の判定は比較的容易です。
これに対し、「インターネットに接続されたデジタル複合機」とはどういうものを指すのでしょうか?
インターネットという言葉自体に幅がありますので、誤解されがちですが、社内ネットワークに接続されて使用されているというだけでは対象とはならないようです。
条文を読む限り、デジタル複合機自体が、外部との間でメールや画像等を送受信できることが必要だと思われますので、対象資産になるかどうかを判定するときはご注意下さい。
(参考:租税特別措置法施行規則 第20条の2の2 1項2号)

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

特別償却とは?

前回の繰り返しになりますが、法人税法の規定に基づく減価償却のことを「普通償却」といいます。
それに対して、「特別償却」というものがあります。
特別償却とは、特定の設備等を取得し、使用を開始したときにおいて、普通償却とは別に上乗せして償却できる制度のことです。
例えば、3000万円の機械を取得した場合、普通償却限度額が500万円であり、特別償却限度額が取得価額の30%であれば、
普通償却限度額 500万円
特別償却限度額 900万円
(償却限度額) 1,400万円となります。
この制度は、中小企業対策などの政策的要請により、法人税法ではなく、「租税特別措置法」という法律により規定されています。
なお、租税特別措置法は時限立法ですので、すべての規定に「平成○○年○月から平成○○年○月まで」という取得時期の限定があります。
中でも、特に適用頻度の高い制度は以下の通りです。
(適用要件等については省略します。)
①中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却
  取得価額の30%
②事業基盤強化設備を取得した場合等の特別償却
  取得価額の30%
③情報基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却(H18年新設)
  取得価額の50%

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

特殊支配同族会社外しは可能か?

特殊支配同族会社に該当するか否かは、事業年度末の状況により判定されることになっています。
実際問題として、現状のままでは特殊支配同族会社に該当する見込みの会社について、役員基準・株式基準のいずれかを満たさないように操作することにより、増税対象から外すことは可能なのでしょうか?
1.役員基準
親族以外の役員の数だけを増やしたとしても、その役員が経営に常時参画しているという実態がなければ意味はありません。
すでに経営に参画していたが役員に就任していなかった人がいるなど、非常にレアな場合を除いて、役員基準による特殊支配同族会社外しは、ほぼ不可能だと思われます。
2.株式基準
業務主宰役員グループの持株比率を90%未満にするためには、形式的に外部に名義を借りるのではなく、実際に持株の第三者への移転(譲渡又は贈与)を行うか、第三者に増資を引受けてもらうことなどが必要だと考えられます。
①譲渡の場合
売却価額と取得価額との差額は譲渡所得となり、所得税が課税されます。
②贈与の場合
贈与した資産価額が110万円を超えると、贈与税が課税されます。
③増資の場合
税額は発生しませんが、譲渡の場合より大きな資金が必要となります。また、資本金等が増加することになるため、次年度以降において、法人地方税の均等割額などが増加します。
①②③のいずれの場合も、一株あたりの株価を考えなくてはなりませんし、株式を分散することのリスクも考えておかねばなりません。具体的には、会社が望まない者が将来的に株主になる可能性が生じてくるのです。会社が今後も成長していけば、将来的にそれらの者から、今回と同額で買い戻すことはできないものと考えておくべきです。
また、その人(又は法人)に、株主になってもらう合理的な理由が必要かと思います。例えば、業務提携を前提とした株式の譲渡などです。
単に、増税対象から外すためというのでは、完全に租税回避行為になってしまい、税務否認される危険性があるのです。
持株比率を変動させる場合には、慎重に行ってください。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/

特殊支配同族会社に対する増税の除外規定

特殊支配同族会社に対する増税について前々回までに概要をお伝えしてきましたが、今回は、その除外規定について解説します。
まず、基準所得金額についての説明が必要です。
基準所得金額は、その会社の所得金額(過去3期分)に業務主宰役員給与(過去3期分)を加算した金額を、1年分に平均した金額をいいます。
留意点としては、加算される業務主宰役員給与は、業務主宰役員一人の役員給与だけで、業務主宰役員関連者に対する給与等は含まれないことが挙げられます。(また、欠損金がある場合などは、計算が複雑になりますので、今回は省略します。)
この基準所得金額が少額である場合には、今回の増税が適用されないことになっているのです。
具体的には、
①基準所得金額が800万円以下のとき
適用されません。
②基準所得金額が800万円を超え、3,000万円以下のとき
業務主宰役員給与(過去3期分平均)が基準所得金額の半分以下であれば、適用されません。

大阪市中央区の信和綜合会計事務所
http://www.shinwa-ac.net/