記事一覧

がん保険の改正

以前から噂はありましたが、法人税の節税(?)に利用されてきた「がん保険」に、国税庁は待ったをかけるようです。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410240007&Mode=0

どのように取扱が変わるのかは通達が公表されてからお伝えするつもりですが、節税(?)をセールストークにして保険を売っていた人には大きな影響があると思います。
何度も節税(?)と書きましたのは、私はがん保険の利用が本当の意味での節税にはなっていないと考えているからです。

終身保障タイプのがん保険については、以前は基本的に全額損金算入が認められていました。
それ故、このような保険を利用することにより、法人の利益を圧縮して法人税を少なくすることができました。
しかし、数年後に保険を解約した時には、解約返戻金の全額に対して法人税が課されることになります。
つまり、保険を使った節税というものは課税を先送りしているにすぎず、長い目で見ると法人税は減少していないのです。

保険を売る人は、保険の解約に合わせて役員退職金などの損金を計上することにより、法人税を発生させないことができると主張します。
確かに、役員が退職する事業年度に役員退職金という大きな費用だけが発生すると大きな当期損失となりますので、それを防ぐために保険を利用して業績を平準化することの意義は認めます。
しかし、本当に法人税が減少しているのでしょうか?
答えは「否」です。

設例で考えます。

<がん保険を利用しない場合>
・経常利益200が8年続く。
・5年目に500の役員退職金が発生する。
・法人税率40%
   所得 法人税
1年目 200  80
2年目 200  80
3年目 200  80
4年目 200  80
5年目△300   0(欠損金300発生)
6年目 200   0(欠損金200控除)
7年目 200  40(欠損金100控除)
8年目 200  80
合計 1100  440

<がん保険を利用する場合>
・経常利益200が8年続く。
・年間100のがん保険に5年間加入、5年後の解約返戻金500(単純返戻率100%)
・5年目に500の役員退職金が発生する。
・法人税率40%
   所得 法人税
1年目 100  40
2年目 100  40
3年目 100  40
4年目 100  40
5年目 100  40
6年目 200  80
7年目 200  80
8年目 200  80
合計 1100  440

もはや問答は無用かと思います。
長い目で見た場合には、法人税は絶対に減少しません。
また、設例の場合は単純返戻率が100%ですので社外に資金の流出はありませんが、100%を下回る場合は社外に資金が流出します。
つまり、単純返戻率で100%を超えないと、保険事故が発生しない限り、元は取れないということになります。
それが保険という契約の本質であり、保険を売る人が良く使う「実質返戻率」という用語には意味がないのです。


信和綜合会計事務所(大阪市中央区の税理士法人)
http://www.shinwa-ac.net/
税理士をお探しの方がいらっしゃいましたら、信和綜合会計事務所に是非ご紹介ください。