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モラトリアムと徳政令

某大臣の「モラトリアム」発言が波紋を広げています。
モラトリアムとは支払猶予令を意味し、借入金などの債務元本の返済を一定期間猶予することを定めた法令です。
日本では、昭和恐慌の時に出されたものが有名です。

このモラトリアムとよく混同されるのが「徳政令」です。
徳政令とは、鎌倉時代末期から室町時代初期に幕府から出された命令で、債務元本を無効にする(帳消しにする)ものでした。
お金を貸す側にとっては、非常に理不尽な命令だったことでしょう。

このように、「モラトリアム」と「徳政令」は債務元本の返済義務が残るか残らないかで大きな差異がありますが、債権者(お金を貸す人)の立場からすると、どちらも困った命令であることに変わりはないのです。

資本主義経済の下では、お金を貸す側(金融機関など)は相手を選びます。
つまり、返済の見込みのある人を選別して融資し、元本に加えて利息を回収することにより儲けるのです。
当然のことですが、融資先の中には、当初は返済の見込みがあったにもかかわらず、その後の状況の変化により返済が困難になるところもあります。
そんな場合、お金を貸した側は何とか債権を回収したいと考えるはずです。
しかし、「モラトリアム」が出されると、元本の返済がストップしてしまうのです。
そして、モラトリアムの期間中に融資先が倒産すれば、多額の貸倒損失が発生することになるのです。

このような事態が想定される時に、お金を貸す側はどのような行動をするでしょうか?
・法案が成立するまでに回収してしまおう。(貸し剥がし)
・返済に少しでも不安のあるところには貸さない。(貸し渋り)
このように考えるのが自然です。

また、金融機関にモラトリアムに耐えるだけの余力がないことも問題です。
モラトリアムの内容にもよりますが、一定の自己資本比率をクリアするためには、公的資金の注入が必要となる金融機関も少なくないのではないかと思います。

残念ながら、これでは完全に共産主義です。
今に始まったことではないですが。。。


信和綜合会計事務所(大阪の税理士法人)
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