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医療法人などは特殊支配同族会社になるの?

私たち生きている人間のことを「自然人」といいます。
当然のことながら、誰しもが、生まれながらにして人格を有します。
ここでいう「人格」とは、人柄という意味ではなく、権利・義務の帰属主体となりうる資格を意味します。
それに対し、法律により、人格を付与された主体を「法人」といいます。
ところで、法人税法の対象となる法人には、株式会社だけでなく、医療法人や税理士法人など会社法以外の法律により人格を与えられた法人が含まれます。
これらの法人は、「特殊支配同族会社」に該当するのでしょうか?
結論から言いますと、該当しません。
なぜなら、法人税法の特殊支配同族会社の規定(35条)は一貫して「会社」という表現を用いているからです。
つまり、特殊支配同族会社は、会社法に規定する法人(以下列記)に限定されるため、医療法人等は対象とならないのです。
①株式会社
②特例有限会社
③合名会社
④合資会社
⑤合同会社

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http://www.shinwa-ac.net/

常務に従事する役員とは?

特殊支配同族会社の判定における「常務に従事する役員」とは、
A.経営に関する業務を
B.日常継続的に遂行している
者のことを指します。
それでは、以下の者は「常務に従事する役員」に該当するのでしょうか?
①監査役、会計参与
会社法上、両者には経営に関する権限がないので、該当しません。
②使用人兼務取締役
使用人兼務取締役とは、営業部長・経理部長など、使用人としての職制上の地位を有する取締役のことを指します。
多くの場合、彼らは使用人としての仕事だけを行っていることから、一般的には、常務に従事する役員に該当しないことが多いと考えられています。
ただし、使用人兼務役員が経営に参画している会社もあると想定されますので、例外は十分考えられます。
③相談役、顧問
実質的に経営に参画しているものであれば、日常継続的に業務を行っている限り、常務に従事する役員に該当します。
④非常勤の取締役
結論から言いますと、会社に毎日出社している・していないという意味での常勤・非常勤の区分は関係ないものと考えられます。
毎日出社していなくても、経営に関する業務を日常継続的に遂行していれば、常務に従事する役員に該当します。
ただ、非常勤の場合、経営に関する業務を日常継続的に遂行することは、事実上困難なケースも多いと思われますので、慎重な判断が必要です。

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特殊支配同族会社の範囲

それでは、今回の増税の対象となる特殊支配同族会社は、どういった会社なのでしょうか?
具体的には、事業年度末の時点において、「①株式基準」、「②役員基準」で判定するのですが、これらを両方とも満たす同族会社だけが「特殊支配同族会社」に該当します。
従って、「①株式基準」、「②役員基準」の片方だけ満たす会社は「特殊支配同族会社」に該当しないことになります。
①株式基準
業務主宰役員グループが有する株式(議決権)が株式総数(議決権総数)の90%以上となる同族会社
業務主宰役員グループとは、
A.業務主宰役員
B.業務主宰役員の親族
C.業務主宰役員の内縁の夫・妻
D.業務主宰役員の家事使用人
E.業務主宰役員からの金銭等で生計を維持している者(愛人など)
F.CDEの者と生計を一にするこれらの者の親族
G.業務主宰役員とBCDEFの者が支配している同族会社
などが該当します。
要するに、業務主宰役員の意向に従うと想定される人(または法人)のことです。
②役員基準
常務に従事する役員の総数のうち、業務主宰役員グループの人の占める割合が50%超(50%はセーフ)となる同族会社
「常務に従事する役員」については、次回のテーマとします。

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業務主宰役員とは?

業務主宰役員とは、会社の経営に最も中心的に関わっている一人の役員のことを指し、一般的には、代表取締役が該当することが多いと思われます。
しかし、代表取締役が複数いる場合や、代表取締役以外に陰の実力者がいる場合などは、そう単純ではありません。
このような場合、経営に関する最終決定権限を有する者が、業務主宰役員となると考えられます。
また、会社の経営に最も中心的に関わっている役員に対する給与は、その会社で最も高いことが多いと想定されます。
従って、役員給与の最も高い役員を業務主宰役員と考えることにも合理性があるでしょう。
ただ、実際の判定は、それぞれの会社の複雑な事情が絡み、難しいケースもあるかと思いますが・・・

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特殊支配同族会社に対する増税

以前にもご報告しましたが、今年の税制改正により、特殊支配同族会社(実質一人オーナー会社)に対する増税法が成立しました。
具体的には、特殊支配同族会社に該当する会社において、業務主宰役員に支給する役員給与のうち、給与所得控除額に相当する金額を損金の額に算入しないこととされたのです。
つまり、給与所得控除額に法人税等の実効税率(約40%)を乗じた金額だけ法人税等の増税ということになります。
なお、この規定は、平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
次回以降で、
「業務主宰役員」
「特殊支配同族会社の範囲」
「除外規定」
などにつきまして、順次説明いたします。

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決算期変更の利用可能性

今年の税制改正により、定期同額給与の改定は、期首より3ヶ月以内と明記されました。
その結果として、「今年は利益がすでに相当出ているから、最後の数ヶ月間だけでも役員給与を増額して圧縮しよう。」といったことは、まず不可能となりました。
しかし、決算期末までの数ヶ月間に、大口の取引により大幅な利益が計上される見込みの場合などは、事業年度を短縮することにより、役員給与を改定することは選択可能だと思います。
(事業年度を短縮するためには、決算期の変更について臨時株主総会の決議が必要となります。)
具体的には、3月決算で、X2年2月に大幅な利益が計上される見込みである場合には、X1年内に臨時株主総会にて決算期を12月に変更し、事業年度をX1年12月で終了させるのです。
その後、大幅な利益が計上される見込みの新事業年度において、役員給与の改定を行うことにより、利益及び税額のバランスをある程度取ることができるのではないかと思います。
ただ、あまり頻繁に決算期変更を行うことには合理性がなく、脱税行為と認定されることも充分考えられますので、お勧めはできません。

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利益連動給与なんて…

利益連動給与につきましては、結論から言いますと、一般の中小企業は使えません。
なぜなら、同族会社が除外されている上に、算定方法を有価証券報告書に記載しなければならないため、実質的に上場会社などに限定されているからです。
残念ながら、事前確定届出給与も含めて、臨時的な役員給与で利益の圧縮を図り、「節税」をすることはできないということになります。
しかし、法人税法上、損金の額に算入されないからといって、臨時的な役員給与(役員賞与)を支給できないわけではありません。
ただ、法人所得の計算上、役員賞与は損金不算入ですから、法人税が課税された上に、個人給与所得として所得税までも課税されることになり、実務上避けられることが多いのです。
旧商法では役員賞与は利益処分項目とされており、それを論拠に税法は損金不算入としてきたのですが、新会社法では役員賞与も職務の対価と考えるようになっています。
また、欧米主要国でも、役員賞与は職務の対価と考え、全額損金算入が基本です。
個人的には、給与所得として個人所得税が課税されている以上、法人税まで課税するのは二重課税となりますので、理不尽な税法だと思っています。

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事前確定届出給与

執務する役員に対する給与は、損金算入するためには、基本的に毎月同額であることが原則です。
しかし、中小企業の場合、唯一の例外として、「事前確定届出給与」の制度が認められています。
この制度は、所定の時期に所定の金額を役員に支給することを株主総会などで定めた上で、事前に税務署長に届け出ることを条件に、損金算入が認められるというものであり、「定期同額給与」の例外規定となっています。
具体的には、毎月の定期同額給与に加えて、盆・暮その他任意の時期に一定額を支給する場合などが該当します。
ただし、届出額と異なる支給をしたときには(多い場合だけでなく少ない場合も含む)、支給額の全額が損金不算入とされますので、節税を目的とした支給額の調整は不可能となっています。
個人的には、この制度は「使い物にならない」と考えています。
しかし、非常勤の顧問や相談役などに、年一度または半年に一度給与を支給している場合などは、毎年届出が必要となりますので、忘れないように留意することが必要です。
なお、届出期限については6/28のコラムをご参照下さい
また、届出書の様式については以下のサイトをご参照下さい。
http://www.nta.go.jp/category/yousiki/houjin/annai/5104.htm

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役員給与の改正概要

8月からは、大きな税制改正のあった役員給与について説明します。
個別の論点は次回以降に譲ることにし、今回は改正のポイントのみ列挙します。
なお、以下の改正は平成18年4月1日以後に開始する事業年度からの適用となります。
1.役員給与の概念
従来の役員報酬、役員賞与、役員退職給与等という区分がなくなり、「役員給与」という概念で統合されました。
2.損金算入される役員給与
下記の役員給与以外は、損金不算入となります。
①定期同額給与
②事前確定届出給与
③利益連動給与(実質的に有価証券報告書提出会社に限定)
④使用人兼務役員の使用人分賞与
3.実質的「一人会社」に対する増税
特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度が新設されました。
一言で言いますと、オーナーの給与所得控除額が損金算入されなくなるということです。
この制度に関しては、私自身、憤りを感じております。
場合によっては、赤字決算でも法人税額が発生することになり、著しく中小企業の競争力を低下させることになります。
国の税収不足も理解できますが、比較的小規模のオーナー企業に絞って増税すべきではなく、給与所得控除そのものを一定割合削減するなど、広く浅く税収を確保すべきです。
おそらく政府は、今後の国政選挙をにらみ、国民の大多数を占める給与所得者を敵に回したくないのでしょう。
ただ、この制度にはいくつかの除外規定があり、次回以降で詳細に説明いたします。

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教育訓練費の税額控除

平成18年の税制改正ではないのですが、今年から実質的に適用可能となる制度に、「教育訓練費が増加した場合の特別税額控除制度」があります。
この制度は、教育訓練費が前2事業年度の平均額より増加した場合、その25%を税額から控除できる制度です。中小企業者の場合は、さらに有利な方法も選択可能です。(税額の10%が限度)
納税者に有利な制度ですので、該当される事業者は是非適用してください。
1.対象事業者
青色申告書提出者(個人事業者含む。)
2.対象期間
平成17年4月1日から平成20年3月31日までに開始する事業年度
但し、設立第1期目は適用できません。
3.教育訓練の受講対象者
①対象となる者
法人の使用人(アルバイトや派遣社員を含む。)
②対象とならない者
役員及びその親族など
4.教育訓練費の範囲
①自社研修費用
②他者研修委託費
③外部研修参加費
④教材費
なお、詳細は経済産業省のサイトを参照してください。
http://www.meti.go.jp/policy/jinzai_seisaku/jinzai-genzei_qanda.pdf
5.申告書添付資料
適用年度・前事業年度・前々事業年度の以下の内容を記載した書類を確定申告書に添付することが必要です。
①教育訓練を行った日
②教育訓練の内容
③参加者名
④支出年月日
⑤支出した内容及び金額
⑥相手先名及び所在地

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