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中古資産の耐用年数

事業で使用する資産を新品ではなく中古で購入することがあるかと思います。
このような資産の耐用年数はどのようになるのでしょうか?

原則として、中古資産の耐用年数は、その後の使用可能期間として見積もられる年数とされます。つまり、資産の状況を個別に勘案して、あとどれくらいの期間使えるかを決定するということです。
しかし、そのような見積もりは通常困難なことが多いため、以下の算式で耐用年数を計算することが認められています。

<法定耐用年数の全部を経過した資産>
法定耐用年数×20%
<法定耐用年数の一部を経過した資産>
法定耐用年数-(経過年数×80%)

なお、上記算式による計算結果が2年未満となるときは2年とし、計算結果に1年未満の端数があるときは切り捨てます。

例えば、普通自動車を中古で取得した場合を考えてみましょう。
普通自動車の法定耐用年数は6年と税法で定められていますので、経過年数が①②③の場合を想定して、上記算式で計算しますと、
①取得時までの経過年数が3年9ヶ月の場合
6年-(3年9ヶ月×80%)=72ヶ月-(45ヶ月×80%)
=36ヶ月→3年
②取得時までの経過年数が3年10ヶ月の場合
6年-(3年10ヶ月×80%)=72ヶ月-(46ヶ月×80%)
=35.2ヶ月=2年11.2ヶ月→2年(1年未満切捨て)
③取得時までの経過年数が7年の場合
6年×20%=1.2年→2年(2年未満の場合は2年)
となります。

上記のとおり、普通自動車を中古で取得する場合、取得時の経過年数が3年10ヶ月以上であれば、耐用年数を2年とすることができます。
さらに、車両について定率法を採用している場合、期首月に中古取得して使用開始すれば、初年度に全額を償却することができるのです。
(1円の備忘価額は残ります。)

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改正減価償却制度(Ⅶ)

5月から断続的に連載してきました「改正減価償却制度」シリーズも今回で最後となります。
今回は、償却方法の届出についての留意点です。
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産については、確定申告書の提出期限までに、「減価償却資産の償却方法の届出書」を所轄税務署長に提出することになっています。

この届出書を提出しなかった場合は、平成19年3月31日までの取得資産について適用される償却方法と同一の償却方法を選定したものとみなされます。
それまで定額法を選定していた場合は、改正後の定額法を選定したとみなされますし、定率法を選定していた場合は、改正後の定率法を選定したものとみなされるのです。
ただし、改正前の定率法と改正後の定率法、改正前の定額法と改正後の定額法等は名称こそ同一ですが、計算方法・償却限度額は大きく異なりますので、シミュレーションにより届出を行うか否かを検討することが必要です。

なお、経過措置として、平成19年4月1日以後最初に終了する事業年度に限って、平成19年3月31日以前取得資産の償却方法を変更することが、その確定申告書の提出期限まで例外的に認められていますので、ご注意下さい。

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改正減価償却制度(Ⅵ)

以前にも簡単に紹介しましたが、平成19年の税制改正により、耐用年数が2年の減価償却資産について、定率法の償却率は「1.000」とされました。
この結果、耐用年数が2年であるにもかかわらず、最初の1年で償却が完了してしまうという奇妙な事態が発生することとなりました。
ただ、最初の1年で償却が完了するのは、事業年度開始月の月末までに、資産を取得し、使用を開始する場合に限られます。
事業年度の中途で資産を取得・使用開始した場合は、その月から事業年度末までの月数に応じた金額が1年目の償却限度額となり、残額は2年目の償却限度額となります。

12月決算法人の簡単な設例を挙げます。
--取得価額1,000,000円の資産(定率法、耐用年数2年)を4月20日に取得--
1年目 750,000円(1,000,000円×1.000×9/12ヶ月)
2年目 249,999円(残存簿価1円)

なお、新品取得の場合は、法定耐用年数が2年の減価償却資産は映画フィルムなど極めて少数に限られています。
しかし、中古資産の取得の場合は、使用年数によっては耐用年数が2年となることもあり、注意が必要です。

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改正減価償却制度(Ⅴ)

今回は、既存の減価償却資産に対して資本的支出がなされた場合の償却方法について考えたいと思います。
資本的支出とは、既存の資産の改良費のことです。
もう少し厳密な表現をしますと、
・既存資産の使用可能期間を延長させる支出
または
・既存資産の価値・機能を向上させる支出
と言うことができます。
(具体的にどのような支出が資本的支出に該当するかについては、実務上判断が難しい場合もあり、別の機会で説明することにします。)

資本的支出があった場合の償却方法については、既存資産の取得時期により、いくつかの方法が認められています。
しかし、いずれの場合も、既存の減価償却資産とは別個に取得した資産として償却する方法が原則的であり、早期に償却が進むという点で有利な償却方法となっています。
そのため、実務上もこの方法により償却計算がなされるものと想定されます。

ただし、平成10年3月31日までに取得した建物に対して、資本的支出がなされた場合については、注意が必要です。
具体的には、その建物の償却方法が定率法の場合、資本的支出を既存建物の取得価額に加算する方法を選択することにより、実質的に定率法の適用を受けることができるのです。
ちなみに、建物に対する定率法の適用は、現在では認められていませんが(定額法のみ)、平成10年3月31日までに取得したものについては定率法が認められています。

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改正減価償却制度(Ⅳ)

前回までに説明しましたが、平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産については、改正後の償却方法により、残存簿価1円まで償却することが可能となりました。
これに対し、平成19年3月31日までに取得した減価償却資産は、改正前の償却方法により、取得価額の95%相当額に到達するまで償却を行うことになります。
その後、取得価額の95%相当額まで到達した減価償却資産については、到達した事業年度の翌事業年度から、5年間(60ヶ月)で均等償却することとされました。
ポイントは、前期末の時点で95%相当額に到達している資産でなければ適用できないという点です。

簡単な説例です。
--取得価額100万円、耐用年数5年の機械を定額法で償却--
1年目の減価償却費 18万円
2年目の減価償却費 18万円
3年目の減価償却費 18万円
4年目の減価償却費 18万円
5年目の減価償却費 18万円(この時点で残存価額10万円)
6年目の減価償却費 5万円(この時点で償却可能限度額5万円)
7年目の減価償却費 1万円
8年目の減価償却費 1万円
9年目の減価償却費 1万円
10年目の減価償却費 1万円
11年目の減価償却費 9,999円(残存簿価1円)

なお、この制度は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

<追記>
法人税法施行令を忠実に読みますと、7年目以降の減価償却費は
7年目の減価償却費 9,999円
8年目の減価償却費 9,999円
9年目の減価償却費 9,999円
10年目の減価償却費 9,999円
11年目の減価償却費 9,999円
12年目の減価償却費   4円(残存簿価1円)
となりますが、マニアックになりますので説明は省略します。

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改正減価償却制度(Ⅲ)

前回の説例の定額法では、毎期の償却額は均等でした。
これに対し、定率法は毎期の償却額が逓減する償却方法です。
具体的には、期首簿価に一定の償却率を乗じて償却額を計算する方法であり、期首簿価は、償却を重ねるごとに小さくなりますので、償却額が徐々に減ってゆくのです。
--取得価額100万円の車両を償却率0.417(耐用年数6年)の定率法で償却する場合--
1年目の減価償却費 417,000円(取得価額1,000,000×0.417)
2年目の減価償却費 243,111円(期首簿価583,000×0.417)
3年目の減価償却費 141,733円(期首簿価339,889×0.417)
4年目の減価償却費  82,631円(期首簿価198,156×0.417)
5年目の減価償却費  48,173円(期首簿価115,525×0.417)
6年目の減価償却費  28,085円(期首簿価67,352×0.417)
となります。
今回の税制改正後も、定率法による減価償却額は基本的に上記算式によって計算されるのですが、以下の二点で従前と異なります。
①償却率の改定
改正後は、耐用年数経過時に取得価額の10%ではなく、残存簿価1円まで償却する必要がありますので、償却率は大幅にアップしています。
上記の説例は、改正後の6年の償却率0.417で計算されています。
改正前の6年の償却率が0.319であったことを考えますと、定額法の場合よりも、償却の大幅な前倒しがなされているといえます。
②保証率・改定取得価額・改定償却率という概念の導入
上記の説例では6年経過後も39,267円の帳簿価額が残っており、同様の計算方法で残存簿価1円まで償却するためには、あと20年ほど要します。
そこで、新たな定率法では、定率法によって計算した償却額が一定額を下回った事業年度から、定額法に切替えることとされました。
この一定額を償却保証額と呼び、取得価額に保証率を乗じた金額となっています。
耐用年数6年の場合、保証率は0.05776ですので、償却保証額は取得価額1,000,000円×0.05776=57,760円となります。
上記説例の5年目の金額は48,173円であり、償却保証額57,760円を下回りますので、5年目より定額法に切替えることになります。
切替後は、切替時の期首簿価を「改定取得価額」とし、それに「改定償却率」を乗じて、減価償却額を計算します。
説例の場合、耐用年数6年の改定償却率は0.500ですので
5年目の減価償却費 57,762円(改定取得価額115,525円×0.500)
6年目の減価償却費 57,762円(改定取得価額115,525円×0.500)
となります。
なお、償却率・改定償却率・保証率は以下の最終ページに記載があります。
http://www.nta.go.jp/category/pamph/houjin/h19/genkaqa.pdf

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改正減価償却制度(Ⅱ)

今回の減価償却制度の改正は、残存価額・償却可能限度額が廃止され、残存簿価1円まで償却できるようになったことに尽きると思います。
それでは、残存価額・償却可能限度額とはどんなものだったのでしょうか?
通常の有形固定資産の場合、残存価額は取得価額の10%、償却可能限度額は取得価額の5%でした。
簡単な説例を挙げます。
--取得価額100万円、耐用年数5年の機械を定額法で償却--
<改正前>:平成19年3月31日以前の取得資産
1年目の減価償却費 18万円
2年目の減価償却費 18万円  
3年目の減価償却費 18万円
4年目の減価償却費 18万円
5年目の減価償却費 18万円(この時点で残存価額10万円)
6年目の減価償却費 5万円(この時点で償却可能限度額5万円)
これで減価償却はストップし、売却・廃棄しない限り、5万円が帳簿価額として残ります。
<改正後>:平成19年4月1日以降の取得資産
1年目の減価償却費 20万円
2年目の減価償却費 20万円  
3年目の減価償却費 20万円
4年目の減価償却費 20万円
5年目の減価償却費 19万9999円
帳簿には備忘価額として残存簿価1円が残ることになります。
上記の減価償却費の年次推移からも明らかですが、実質的な減価償却の前倒しが図られていますので、事業者にとっては有利な改正ということができます。
また、定率法については特に大きな改正がなされていますので、次回以降で採り上げたいと思います。
なお、国税庁より4月下旬に「減価償却制度の改正に関するQ&A」が公表されています。
http://www.nta.go.jp/category/pamph/houjin/h19/genkaqa.pdf
実務の参考になると思いますが、少しマニアックかもしれません。

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改正減価償却制度(Ⅰ)

平成19年の税制改正では、減価償却制度について大幅な改正がなされています。
5月からは断続的に、改正後の減価償却制度について説明したいと思います。
以前、減価償却とは何かについて、簡単に説明しました。
http://www.shinwa-ac.net/cgi/blog/diary.cgi?date=20061204
その中で、このような一節がありました。
---引用始---
法人税法でも、減価償却に関しては
①取得価額
②耐用年数
③残存価額
④償却方法
などの細かい規定があり、これらに基づいて計算される減価償却のことを普通償却と呼びます。
---引用終---
今回の改正では、主に③④について重大な改正がなされています。
と言うよりも、③の「残存価額」の概念そのものが無くなり、それに伴って④の「償却方法」が改正せざるを得なくなったと言うほうが正しいでしょう。
具体的な内容は次回以降で解説します。

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平成19年改正の政令・省令

3月30日に、平成19年度国税関係の改正政令・省令が公布されました。
法人税についても、主として「減価償却制度」と「役員給与」に関して、大きな改正がなされています。
詳細は次回以降で解説しますが、論点を列挙しますと以下の通りです。
1.減価償却制度について
①定率法を採用する場合の、定額法への切替時期の判定・切替後の計算方法について、「保証率」「改定取得価額」「改定償却率」の概念により整理された。
②償却可能限度額に達した減価償却資産の償却計算の方法が明らかにされた。
③改良費などの資本的支出があった場合の取扱いが規定された。
④耐用年数2年の定率法償却率は1.00とされた。
2.役員給与について
①定時同額給与の改定事由に「臨時改定」が加えられた。
②事前確定届出給与について、届出の変更が可能となった。
んー。
役員給与については、驚きの改正だと言われている方もおられるようですが、依然として全く使い物になりません。
そもそも、会社法は役員給与を費用だと考えているにもかかわらず、そのうちの一部が税務上損金算入できないということに重大な問題があります。
貰う側で個人所得税が課されているのに、払う側でも法人税を課すということは、完全に二重課税になります。
国が民間企業の役員給与に実質的に口を挟むことは、共産主義ではないのかと思ったりもします。

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法人税に関する通達の改正

3月22日に、法人税に関する通達の改正が国税庁より公表されました。
今回の改正は平成18年度の法人税関係法令の改正に対応したものです。
内容的には、「出向者に対する役員給与の取扱い」を除いて、現在までに国税庁が公表したQ&Aや質疑応答などの考え方を踏襲しており、目新しい論点は多くはありません。
(「出向者に対する役員給与の取扱い」に関しては、次回以降で採り上げる予定です。)
それ以前に、いったい「通達」とは何なのでしょうか?
まず、法人税に関する法令としては
Ⅰ.法人税法
Ⅱ.租税特別措置法(法人税の特例についての規定)
があり、Ⅰ・Ⅱのそれぞれに、詳細を補完するための
①施行令(内閣が定める命令、「政令」といいます)
②施行規則(財務省が定める命令、「省令」といいます)
があります。
これに対して、通達は、国税庁長官が国税局職員や税務署職員に対して出される命令に過ぎず、抽象的な法令の解釈を税務当局サイドで統一するためのものです。
従って、通達に従った処理をしている限り、法令違反にはならないと言えます。
しかし、通達に従わない処理をしているからといって、必ずしも法令違反になるわけではなく、場合によっては、通達に従わない処理でも、容認されることもあると思います。
ただ、現在有効な通達は、一部を除いて合理的な解釈を示していることが多いため、実務上、非常に参考になる資料であると言わざるを得ません。

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