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住宅資金贈与の改正

平成22年の税制改正では、住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税枠が大幅に拡大されることになります。

これまでの住宅取得資金の非課税制度は、両親や祖父母などの直系尊属から、居住用の住宅の取得・増改築のための資金の贈与を受けた場合に、500万円までを非課税とする制度でした。
これが、平成22年中の贈与の場合は1500万円、平成23年中の贈与の場合は1000万円に、非課税枠が拡大される見込みなのです。

つまり、平成22年中の贈与の場合は、暦年課税の基礎控除額110万円と合わせて最大で1610万円(平成23年の場合は1110万円)の贈与まで贈与税が発生しないことになります。

親に家を購入してもらうということが良いことなのかどうかについては賛否両論があります。
しかし、この改正は低迷する住宅需要をある程度刺激する政策となると思われます。
また、相続対策としてもかなり有利なものとなるのではないでしょうか?

例えば、夫婦が3220万円のマンションを購入するために、それぞれの親から1610万円の資金贈与を受け、購入したマンションの持分を1/2ずつとした場合を考えましょう。
この場合、資金の贈与を受けた夫婦には贈与税は全くかからず、それぞれの両親の相続財産も減少させることができるのです。

もちろん、相続時精算課税制度と組み合わせることも可能です。
相続時精算課税の非課税枠2500万円と合わせて4000万円まで非課税で資金贈与をすることができますので、理論上は、夫婦で住宅を共有取得する場合は8000万円もの資金贈与が無税で可能ということになります。
(相続時精算課税を利用した部分は、それぞれの両親が亡くなった時に相続財産に加算されますので、将来的に相続税が課税されることになります。)

ただし、この改正法案はまだ成立していませんので、成立後に適用要件などの詳細を紹介したいと思います。


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贈与のスパイラル

今回は、親から9億円の現金の贈与を受けた人が、その資金を使ってしまった場合を考えてみたいと思います。

贈与税は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告・納税をすることになります。
900,000,000円の贈与の場合は、447,200,000円の贈与税が発生することになります。
しかし、贈与を受けた資金をすでに使ってしまっていれば、納税資金について親から再度の贈与を受けることになるかもしれません。

翌年に、納税資金447,200,000円の全額について親から再度の贈与を受ける場合は、翌々年に220,800,000円の贈与税が発生することになります。
贈与を受ける納税資金447,200,000円については納税により使い切ってしまうため、翌々々年にまたまた親から納税資金の贈与を受けなければならないかもしれません。

裕福な彼らはどうするのでしょうか?


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平成21年分の路線価の公表

7月1日に平成21年分の路線価が公表されました。
http://www.rosenka.nta.go.jp/

(過去の路線価に関する記事)↓
http://www.shinwa-ac.net/cgi/blog/archives/75.html
http://www.shinwa-ac.net/cgi/blog/archives/125.html

全国平均では、平成20年分と比べて5.5%下落したようです。
特に、今年は大都市圏での大幅な下落が目立ちます。
東京圏:平成20年分より6.5%下落
大阪圏:平成20年分より3.4%下落
名古屋圏:平成20年分より6.3%下落

ちなみに、平成20年分は大幅な上昇でした。
東京圏:平成19年分より14.7%上昇
大阪圏:平成19年分より7.4%上昇
名古屋圏:平成19年分より10.9%上昇

これは、かつて経験したことのない乱高下です。
その結果として、平成20年分の路線価だけ極端に高くなっています。

路線価は、贈与税や相続税の計算のときに利用する土地の価格であり、平成21年1月1日から12月31日までの贈与・相続の場合は、今回公表された平成21年分路線価により計算されます。
残念ながら、平成20年1月1日から12月31日までの贈与・相続の場合は、平成20年分の極端に高い路線価により計算されることになります。

時期を自由に決定できる贈与はともかく、人の死により発生する相続に関して、今回のような相場の乱高下の影響を受けてよいものかと個人的には疑問に思いますが、該当する方には「お気の毒」と申し上げるしかありません。


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衆議院の再可決

平成21年6月19日に、衆議院の再可決により、租税特別措置法が再度改正されました。
今年の3月頃より追加経済危機対策の一環として議論されてきた減税法案でしたが、残念ながらあまり評判はよくありません。
それは、減税の恩恵を受ける対象があまりにも限定されているからだと思われます。
今回の改正は以下の3点ですが、注目すべき改正は①くらいでしょう。

①住宅取得等のための金銭贈与に係る贈与税の時限的軽減
・平成21年1月1日から平成22年12月31日までに
・直系尊属(父母・祖父母など)から
・20歳以上の者が
・住宅取得等のために
・金銭の贈与を受けたとき
・その期間内で累計して500万円までの金額
については贈与税を課さないこととされました。
暦年課税の場合は、基礎控除の110万円と合わせて、最大で610万円の贈与まで贈与税が発生しないことになります。

②中小企業の交際費課税の軽減
資本金1億円以下の法人については、定額控除限度額までの交際費は90%が損金に算入されることになっています。
今回の改正により、この定額控除限度額が400万円から600万円に引き上げられただけなのです。
つまり、交際費を400万円以上使っている法人の場合は減税となりますが、400万円以下の場合は減税にはならないのです。
なお、この改正は、平成21年4月1日以降終了する事業年度から適用となる予定です。

③研究開発税制の拡充
試験研究費の税額控除についての時限的な拡充がなされていますが、当然のことながら、研究開発を行っていない法人には全く関係がありませんので、詳細については省略します。


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相続税の申告期限

相続税の申告は、亡くなった日から10ヶ月以内に行うことになっています。
例えば、平成20年9月10日に亡くなられた方で一定額以上の財産を遺された場合は、平成21年7月10日までに相続税の申告が必要になります。

ところが、平成21年度税制改正により「非上場株式等についての相続税の納税猶予制度」が創設されたことに伴い、申告期限の特例が設けられています。

平成20年10月1日から平成21年3月31日までの間に亡くなられた方の相続税申告期限は、以下の2つの要件を満たした場合には、平成22年2月1日まで延長されています。
・遺産に非上場株式がある
・亡くなった方がその会社の代表者であった
なお、この申告期限の特例を適用できるか否かは、相続税の納税猶予制度の適用に関係なく、上記2つの要件を両方満たすか否かにより判定されます。

例えば、平成20年10月15日に亡くなられた方の相続税申告期限は、原則として平成21年8月15日ですが、その方が代表権を有していた会社の株式を遺産として遺された場合は、特例として平成22年2月1日まで期限が延長されることになります。


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贈与税って?

本日(2月2日)より、平成20年分の贈与税の申告・納税がスタートします。
所得税の確定申告が2月16日からですので、一足早く始まることになります。
(申告期限は贈与税・所得税ともに3月16日です。)

ところで、贈与税はどのような税金なのでしょうか?

贈与税は、個人が自分以外の人から財産をもらったときにかかる税金です。
財産をもらった人は、1月1日から12月31日までの間にもらった財産の合計金額から一律110万円(基礎控除額)を控除した金額に、税率を乗じて贈与税の申告・納税を行うことになります。
ただし、1年間にもらった財産の合計金額が110万円以下の場合は、申告する必要はありません。

個人が亡くなったとき、亡くなった人の財産を相続した人には相続税がかかります。
原則として、相続税は亡くなった時点の財産に対して課税されますので、生前に一定の財産を子や孫に贈与しておくことにより、相続税を少なくすることができます。
しかし、生前贈与を無制限に認めると、相続財産を不当に少なくすることが可能になってしまい、相続税を課税する意味がなくなります。
そこで、生前贈与の段階で贈与税を課税し、無制限な生前贈与による「相続税逃れ」を防いでいるのです。
そのため、贈与税の税率は、相続税の税率と比べて高めに設定されています。

贈与税の税率は↓
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm
(国税庁タックスアンサー)

ちなみに、「贈与税法」という法律はありません。
贈与税は、あくまで相続税を補完する税金ですので、「相続税法」という法律の中に規定されているのです。

さて、ここで問題です。
以下の場合は、贈与税がかかるのでしょうか?
問題1
親の所有する土地(時価2000万円)を子に1200万円で売った。
問題2
親が保険料を負担してきた保険契約(10年満期)の満期保険金を子が受け取った。
問題3
甲さんは、父と母からそれぞれ100万円ずつ現金を貰った。

解答1
親から子に対し、土地の時価2000万円と譲渡対価1200万円の差額800万円相当の贈与をしたことになり、子に贈与税の申告・納税義務が発生します。
解答2
実質的に親から子への財産の移転が認められますので、子に贈与税の申告・納税義務が発生します。
解答3
甲さんは合計200万円の現金を貰っており、基礎控除額110万円を超えることになりますので、贈与税の申告・納税義務が発生します。


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相続税大改正の先送り

今年も早いもので、あと1ヶ月となりました。
そんな中、先週の11月27日に、驚きの報道がなされました。
自民党の税制調査会により、「相続税の大改正」が先送りとされたのです。

そもそも相続税については、平成20年の税制改正大綱で、現行の「法定相続分課税方式」から「遺産取得課税方式」への変更を、平成21年度の税制改正で検討する旨が明記されていました。
「法定相続分課税方式」と「遺産取得課税方式」の計算方式の違いについては長くなりますので省略しますが、とにかく相続税額の計算結果は全く異なるものとなります。

さらに困ったことに、「遺産取得課税方式」への変更は平成21年度の税制改正であるにもかかわらず、「事業承継税制」との関連で、平成20年10月1日以降に亡くなった方の相続税から適用するものと予定されていました。
その結果、「遺産取得課税方式」に関する条文規定がないため、「今年の10月1日以降に亡くなった方の相続税の試算が全くできない」という異常な事態に陥っていました。

今回、自民党の税制調査会は、景気や総選挙に配慮して、増税の可能性のある税制改正を先送りしたと言われていますが、方針を決定するのが遅すぎます。
それ以前に、「納税者に不利になる可能性のある税制改正を過去に遡って適用する」としていたこと自体に問題があったと思います。

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平成20年分の路線価の公表

7月1日に平成20年分の路線価が公表されました。
http://www.rosenka.nta.go.jp/

(路線価の説明についてはこちら)↓
http://www.shinwa-ac.net/cgi/blog/archives/75.html

例年ですと、国税庁は路線価を8月に公表していたのですが、1ヶ月早まりました。
その代わり、公開をWEB上に限定し、紙ベースでの閲覧を廃止したようです。

今回公表された路線価の平均額は、平成18年から3年連続の上昇となっています。
しかし、この上昇は都市部での上昇により引き上げられたものであり、地方では依然として下落しています。
その中でも、三大都市圏については上昇幅は縮小したものの、路線価の上昇が続いています。

しかし、不動産の専門家の方のお話を聞くと、現在では大都市圏でも、すでに実際の地価の下落は始まっているようです。
にもかかわらず、平成20年に発生した相続・贈与についての税金は、今回の上昇した路線価を基に計算されることになります。

そもそも路線価は、国土交通省が公表する公示地価の80%を目安に決定されているのです。
その公示地価が毎年1月1日時点の地価であるため、路線価もその影響を受けるのです。

従って、地価の下落局面では、相続税・贈与税の申告は納税者にとって不利になります。
逆に、地価の上昇局面では、有利になります。


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ねじれ国会

12月13日に自民党は、「平成20年度税制改正大綱」を公表しました。
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2007/seisaku-031.html
例年ですと、この内容に沿った形で3月に税制改正法案が成立するのですが、今年度はどうなるのでしょうか?

ご承知のとおり、現在の自民党は、衆議院では単独で過半数の議席を占めているのですが、参議院では連立与党の公明党と合わせても過半数に届かない状態にあります。
いわゆる「ねじれ国会」です。

その結果、与野党間の法案のすり合わせ・修正などで成立する可能性のあるものが中心となっており、消費税の税率アップなどの法案成立の見込が全くないものは、来年度以降に先送りされています。

そんな中、注目すべき制度が創設されることになる見込です。
具体的には、一定の要件を満たす中小企業株式の相続人は、課税価格の80%に相当する相続税額の納税を猶予されるという制度です。
自社株の評価額が大きく、巨額の相続税が発生すれば事業承継が困難となる中小企業にとっては朗報ですが、平成21年度の税制改正で導入される予定ですので、実際の適用までにはまだかなりの時間がかかる見込です。
制度の詳細・適用時期などが明らかになれば、説明したいと思います。

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名義株

預金に関しては、「名義預金」に該当するかが問題となることがありますが、株式に関しても、「名義株」に該当するかが問題となる場合があります。

名義株とは、名義株主に株主の名義を借りただけで、真の所有者が別に存在する株式のことをいいます。
ちなみに、大昔の旧商法では、株主が最低7人必要とされていたため、歴史の長い会社などでは名義株が残っている可能性が高くなっています。
税法上、このような名義株は、真の所有者(実質的な所有者)の資産として取り扱われます。

それでは、どのような株式が名義株と認定されることになるのでしょうか?
具体的には、以下のポイントを総合的に判断して認定されることになると思われます。
①名義人が、株式出資・購入の際の資金を負担していない。
②名義人以外の真の所有者が配当金を受け取っている。
③名義を借りることに関して、覚書・念書等を作成している。
④贈与や譲渡による名義変更時に、契約書の作成をしていない。
⑤贈与や譲渡による名義変更時に、贈与税・譲渡所得税の申告をしていない。
⑥株主名簿が整備されていない。

なお、名義預金は、相続や贈与でのみ問題となるのに対し、名義株はそれだけではありません。
名義株主から、株主としての会社法上の権利を主張され、株主代表訴訟や株式の買取請求などのトラブルが発生することがあるのです。
「名義株」が存在する会社は、早急かつ慎重な対策が必要です。

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