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締日後の給料の未払計上

従業員の給与には必ず締日と支払日があります。

例えば、20日が締日で25日が支払日の会社の場合、3月25日に支払われる給与は2月21日から3月20日の労働の対価ということになります。
3月末決算法人の場合、最後に支払われる給与はこの3月25日支払分ですが、4月25日に支払う給与の一部を費用として未払計上することができます。
具体的には、3月21日から3月31日までの分を日割計算して計上することになります。
(この期間の残業手当なども計上することができます。)
会社と従業員との関係は雇用契約に基づいており、会社には労働時間に応じた給与の支払義務が日々確定していくからです。

しかし、役員に対する給与は、従業員の給与のように日割計算による未払計上はできません。

これは、会社と役員との関係は雇用契約ではなく委任契約に基づいていることに起因します。
委任契約の場合、会社には業務完了後に支払義務が確定することになります。
上記の設例の場合、3月21日から3月31日までの委任契約の対価は、3月末時点で債務として確定していませんので、未払計上することができないのです。


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帳簿書類の保存期間

「帳簿はいつまで保管しないといけないの?」
「昔の請求書や領収証のファイルは邪魔なので捨ててもいい?」
お客様から質問されることがあります。

法人の場合、税法では帳簿書類について7年間の保存が義務付けられています。
帳簿書類とは、例えば以下のような書類です。
①決算書
②総勘定元帳
③補助元帳(売掛帳・買掛帳・固定資産台帳など)
④申告書
⑤取引証憑(納品書・請求書・領収証など)
⑥銀行書類(通帳・小切手帳・手形控など)

しかし、7年経過したとしても、上記の帳簿書類をすべて廃棄してもよいということではありません。
なぜなら、①と②については、会社法で10年間の保存が義務付けられているからです。
また、少なくとも①と④については、法人の損益・納税履歴を示す重要書類ですので、永久保存すべきものと考えられています。

整理しますと、以下のように区分できます。
<永久保存>
①④
<10年間保存>

<7年間保存>
③⑤⑥

小規模な法人の場合、①④は永久保存とし、②③⑤⑥は年度毎にまとめてダンボール箱で管理し、最長の10年経過後に計画的に廃棄すればよいのではないかと思います。


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悪しき税制の廃止

年末に平成22年度税制改正大綱が閣議決定されました。
主な改正内容は以下の通りです。

<法人税>
①特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度の廃止
②グループ法人税制の見直し
<所得税>
③扶養控除の縮減
(15歳以下は廃止、16歳~22歳は63万円から38万円に圧縮)
<贈与税>
④住宅資金贈与の拡充

特に①は愚かな税制でしたので廃止されて当然です。
(平成22年4月1日以後に終了する事業年度から廃止)
この制度は、実質的に出資も経営も社長(または社長一族)だけの会社について社長の給与所得控除を実質的に認めないという制度でしたが、公約どおり廃止されたことに拍手を贈りたいと思います。
↓以前の記事↓
http://www.shinwa-ac.net/cgi/blog/archives/20.html

ただし、「税制改正大綱」では、「二重控除の問題を解消するための抜本的措置を平成23年度税制改正で講じる」されており、不安感が残ります。
この「二重控除」とは、役員給与を法人段階で費用として計上して損金に算入する一方、その役員給与を受け取った個人段階では給与所得控除を受けることだそうです。

しかし、どこが二重控除なのでしょうか?
控除は個人段階の一回だけのはずです。
例えば、社長給与控除前の利益1000万円・社長給与600万円の会社の場合を考えましょう。
この場合、課税される所得(もうけ)は
法人400万円(1000万円-600万円)
個人426万円(600万円-給与所得控除174万円)
となり、控除されたのは給与所得控除174万円の一回だけなのです。

この点について、個人事業を営んでいる場合との不均衡を是正することが必要という人もいますが、なぜ必要なのでしょうか?
個人事業が不利だと思えば、会社を設立して法人事業に転換すればよいのではないかと思います。
むしろ、役員・従業員に関係なく、給与所得控除の水準が高すぎることの方が問題ではないのでしょうか?

②と④は次回以降に紹介することにします。


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法人カード

会社の中には、法人のクレジットカードを作成して、交際費などの経費の支払いをしているところも多いかと思います。
弊事務所の新しいお客様の中に、このような法人カードを利用した場合の保管書類についての誤解がありましたので、採り上げたいと思います。

交際費などについて法人カードを利用した場合、一定期間ごとに利用明細が送付され、銀行口座より代金の口座振替が行われます。
これらを法人の費用として計上するためには、この利用明細を保存しておけばよいと考えている方は意外に多いのではないでしょうか?

しかし、これは誤りです。
法人の費用として計上するためには、法人カードで支払いをした時に受け取る利用控え(お客様控え)を保管しておく必要があるのです。
従って、20件のカード利用を法人の費用として計上するためには、20枚の「カード利用控え(お客様控え)」が必要ということになります。

なお、このような場合の費用の計上時期は、銀行口座から口座振替された時ではなく、原則として法人カードを利用した時となります。


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忘年会費用

11月も下旬となりました。
毎年この季節になると、忘年会の予定が入ってきます。
この忘年会の費用を会社が負担した場合は、どのような取り扱いになるのでしょうか?

まず、忘年会を社内の役員・従業員だけでなく得意先や取引先も招待して行う場合は基本的に「交際費」となり、法人税の所得計算においてその全部または一部が損金の額に算入されません。
ただし、忘年会費用が一人当たり5,000円以下の場合は「交際費」から除外されます。

次に、忘年会を社内の役員・従業員だけで行った場合は、以下の要件をすべて満たせば「福利厚生費」となり、交際費課税はされません。
逆に、以下の要件を一つでも満たさない場合は、「交際費」か「給与」となります。
①相互親睦を目的として会社の行事として行われているか?
②全社員が参加することを予定しているか?
③忘年会として社会で一般に行われている程度の行為・金額か?

②の全員参加要件については、実際に全員が参加することが求められているのではありません。
業務の都合上、当日参加できない社員がいても、社員全員に参加する権利(チャンス)があるのであれば問題はありません。
また、事業所数や従業員数の多い会社など、会社全体で忘年会を行うことが困難な場合は、事業所毎・部門毎でもよいと思われます。
③については抽象的ですが、簡単に言うと常識判断です。

忘年会費用でよく問題となるのが、「二次会」の費用です。
忘年会の二次会は、全員が参加することは考えられず、その費用を会社が負担することも一般的ではありません。
つまり、②③の要件を満たしていないことになりますので、二次会費用は「交際費」または「給与」となるのです。


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信用保証料

金融機関から融資を受ける場合に、信用保証協会に保証してもらうことがあります。
この信用保証制度は実によくできています。
①金融機関は、リスクの大半を信用保証協会に負担させることができる。
②事業者は、金融機関からの融資を受けやすくなる。
③信用保証協会は、リスクの対価として保証料を受け取る。

信用保証協会には様々な保証制度があり、一度は利用されたことがある方も多いのではないでしょうか?
全国信用保証協会連合会
http://www.zenshinhoren.or.jp/

ところで、事業者が信用保証協会の保証を受けて金融機関より融資を受ける場合、保証期間の最初から最後までの保証料全額を前払いすることになります。
保証料率や保証期間によっては、保証料がかなり大きな金額になることもあるのですが、分割納付が認められる場合を除いて、全額前払いが原則となっているようです。

さて、ここで問題です。
この全額前払いした保証料は、支払った事業年度の費用(損金)として処理することができるのでしょうか?
答えは「×」です。
事業者は信用保証協会から保証というサービスを保証期間の始期から満了時まで受けており、翌事業年度以降の期間に係る保証料相当額は支払った事業年度の費用とすべきではないからです。

なお、会計上は、翌事業年度以降の期間に係る保証料相当額は「長期前払費用」として処理することになります。


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交際費課税(Ⅲ)

今回は「接待時のタクシー代」を採り上げたいと思います。
税務調査でもよく問題にされるテーマです。

具体的には、接待時のタクシー代が「交際費に該当するのか、しないのか?」ということです。
これについては、一回あたりの金額が少額であることから、あまり気にしていない会社も多いかと思いますが、意外に影響額が大きくなる場合もあります。
交際費に該当すれば、支出額の全部または一部に法人税が課税されることになるからです。

まず、飲食等の接待をする側の会社がタクシー代を支出した場合については、議論の余地はありません。
接待をする側の会社が支出するタクシー代は、接待の一環として「接待のための支出」に該当しますので、すべてが交際費に該当します。
つまり、相手先の会社の役員・社員のタクシー代だけでなく、自社の役員・社員のタクシー代も交際費に該当するということになります。

それでは、飲食等の接待を受ける側の会社が、自社の役員・社員が深夜に帰宅するためのタクシー代を支出した場合はどうなるのでしょうか?
そもそも、交際費は、租税特別措置法で「仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」と定義されています。
一般に、接待を受けるという行為は接待をするという行為とは異なるものと考えられますので、この場合のタクシー代は交際費の定義には当てはまりません。
つまり、交際費に該当しないため、旅費交通費等で処理してもよいということになります。


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非常用マスクの備蓄費用

予想より早く、新型インフルエンザの流行が始まっているようです。
しかし残念ながら、街角でマスクをしている人はほとんどいません。
少なくとも、混み合う電車などではマスクをしたほうがよいと思うのですが。。。
(もう手遅れかもしれません。)

ところで、一部の会社などでは、新型インフルエンザに備えるため、非常用のマスクを大量購入して備蓄しているようです。
このようなマスクの購入費用は、法人税法上、どのような取り扱いとなるのでしょうか?

原則的には、マスクなどの消耗品は使用時に費用処理し、未使用分は棚卸資産(貯蔵品)として資産計上します。
一般的には、マスクの使用時に事業供用があったと考えるのが自然であり、未使用分については次期以降の事業供用となることから、当期の費用としないという考え方です。

ただし、非常用マスクについては、例外的処理が認められるものと考えられます。
これに関しては、国税庁のタックスアンサーに「非常用食料品の取扱い」についての見解が示されており、参考になります。
この「取扱い」において、災害時用の非常食は備蓄したときに事業供用があったと考えるものとされています。
ということは、非常用のマスクについても備蓄時に事業供用があったものと考えられますので、購入時に福利厚生費などの科目で費用処理してもよいものと思われます。

↓「非常用食料品の取扱い」国税庁タックスアンサー↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/20/05.htm


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労働保険の申告期限

先週末から今週にかけて、労働保険(雇用保険・労災保険)の申告書類が一斉に郵送されています。

昨年までは5月20日が労働保険の申告・納付期限だったのですが、今年からは期限が7月10日となっています。
それに伴い、延納(分割払い)の期限も改定されています。
4月1日から7月31日分(第1期):7月10日までに納付
8月1日から11月30日分(第2期):10月31日までに納付
12月1日から3月31日分(第3期):1月31日までに納付

この改正により、労働保険の期限と、社会保険(健康保険・厚生年金)の定時改定の期限とが重なることになりました。
総務・人事担当の方は業務が重なりますので、事前準備が大切かと思います。

ところで、労働保険の申告には、昨年度(2008.4.1~2009.3.31)の確定申告だけでなく、今年度(2009.4.1~2010.3.31)の概算申告も含まれています。
簡単に言いますと、昨年と同じ従業員給与が発生することを仮定して、今年度分を概算額で前払いするのです。

かなり前のコラムでも書きましたが、労働保険料の会社負担部分については、労働保険申告書提出日の属する事業年度の損金に算入することができます。
http://www.shinwa-ac.net/cgi/blog/archives/136.html
今回の期限の改定では、特に6月決算法人について注意が必要です。
6月末決算法人で、6月中に労働保険申告書を提出した場合は、今年度の概算申告分についても損金算入できます。
しかし、7月になってから申告書を提出した場合は、今年度の概算申告分についての損金算入はできません。


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平成21年度税制改正

平成21年度の税制関連法案が3月27日に国会で成立し、4月1日より施行されています。
以前より導入が決定していた「事業承継税制」以外は、ほぼすべてが景気刺激を目的とした改正となっています。

個人に関する税金では、
・住宅ローン控除の拡充
・土地譲渡益非課税枠の創設
・ハイブリッド自動車の重量税の減免
などすべてが減税項目となっています。

法人、特に中小企業に関する法人税では、以下の2点が影響の大きな改正となっています。

①中小法人等の軽減税率22%(現行)から18%への引下げ
資本金1億円以下の法人では、所得800万円以下の部分については、現行では22%の法人税が課されていましたが、特例的に2年間だけ18%に引き下げられることになりました。
この特例は、平成21年4月1日から平成21年3月31日までに終了する事業年度について適用されることになっています。

②中小法人等の欠損金の繰戻還付の復活
欠損金の繰戻還付(くりもどしかんぷ)は、前期に黒字で法人税を納付した法人が当期に赤字となった場合、前期と当期の所得を通算して、前期の法人税のうち当期の赤字に相当する部分を還付してもらう制度です。
この制度は法人税法の規定ですが、設立後5年以内の中小企業などの一部の例外を除いて、国家財政の悪化により租税特別措置法で長期間停止されていました。
今回の改正では、繰戻還付が復活するのは資本金1億円以下の法人に限定されており、平成21年2月1日以後に終了する事業年度で欠損金額が生じた場合に適用されることになっています。

参考までに、繰戻還付の設例を挙げます。
(設例1)
前期 所得100万円 法人税納付22万円(22%)
当期 所得△50万円 法人税還付11万円(※1)
※1 22万円×(50万円/100万円)
(設例2)
前期 所得 100万円 法人税納付22万円(22%)
当期 所得△200万円 法人税還付22万円(※2)
※2 22万円×(100万円/100万円)
(設例3)
前期 所得△100万円 法人税納付なし
当期 所得△100万円 法人税還付なし(※3)
※3 前期も赤字の場合は適用なし

どちらの制度も、資本金1億円以下の法人が対象となりますが、適用開始事業年度が異なりますのでご注意ください。
①は平成21年4月決算法人から適用されるのに対し、②は平成21年2月決算から適用されます。


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